思い出



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                   写真は若かりし日の I さん。



アメリカに来てよかったことの一つは、歳の離れた友人が何人もできたこと。
なかには、半世紀も年上の友もいる。
彼女たちは、快活でお洒落で、芯は強いけれど茶目っ気があってチャーミング。
こんなふうに歳を重ねたい、と思わせてくれる先輩たちだ。

私が日本で父を看取り、後の処理に奔走していた七月、アメリカではそんな友人の一人が亡くなった。

I さんと私は、彼女のアパートでよく一緒にお茶を飲んだ。 私が気に入った勿忘草のティーカップで。 彼女の昔話は、宝箱を開けるようにわくわくした。
彼女は盲人の認定を受けていて、ふだんの生活はひとりでこなしていたけれど、服を買いに行くことなどたまに介助が必要で、私もお供したものだ。 

入院していた彼女の具合が悪化したらしいことは、夫から電話できいた。
自分のアパートに帰り、死を待っているという。
見舞いに行くよう夫に頼んだ。
数日後の日曜日の夕方、夫はショコラ(犬)を連れて I さんを訪ねた。 彼女はずっと昔プードルを飼っていたことがあり、ショコラをとても気に入っていたから。

夫が見舞いに行くと、彼女はリクライニング・チェアに座っていた。 (彼女の死別した息子の妻がつきそっていた。) 目は見えず意識は朦朧としているようだったが、夫のこともショコラのこともちゃんと分かり、嬉しそうにショコラの柔らかい毛をなでた。 何度も。

若くで離婚し、シングルマザーで育て上げた一人息子は50代初めで突然死去。 
ショコラをなでると、息子が幼い頃の思い出が甦ってきたのかもしれない。

彼女が亡くなった、と夫のところに電話連絡がきたのはその翌朝だった。 89歳だった。

私は I さんに会えなかったけれど、ショコラがちゃんと私の分を、いや私には到底できなかった役割をはたしてくれたようだ。



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   カウチに丸まるショコラ。 ラベンダー色の犬用クッションではなく、毛布を使用中。
            ショコラのセラピー犬としての初仕事だったのかも。

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by kyono_soramoyo | 2008-11-17 04:41 | 身辺雑記 / Personal

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